読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

わたしの新書論

 新書は安価に手っ取り早く情報・教養を得ることができる書籍である。この10年くらいの間に新書の出版点数はかなり増加してきているように思われるが,その分,当たり外れも激しくなっている印象がある。安価とはいえ,やはりお金を払って得られるものが皆無では困る。研究者や編集者,あるいは職業的に本をよむ必要がある仕事をしている人以外は,基本的に外れ本を読む必要はないだろう。そこで新書を構成するいくつかの要素の中でその質に関わる部分を取り出すことで,いかにして良質な情報・教養を得ることができるかについて考えてみたい。

要素その1:文献一覧,あるいは読書案内

 新書はあるテーマについての入門書である。著者はそのテーマがいかに重要で,学ぶべきものであるかを熱心に説く。読者はそれにほだされて,より発展的に学ぶことを志すかもしれない。そのときに有用なのが,参照文献の一覧である。より教育的なものでは「読書案内」というタイトルのもと,今後読むべき書籍・論文・ウェブサイトがその概要とともに記載されている。読者はこれらの情報から次に進むべき針路を見定めることができるようになる。

 もう一つ,この要素が重要である理由は,文献一覧があるということは著者がそれだけ入念にそのテーマについての先行研究を参照していることに他ならないからである。文献一覧が無くても,入念に先行研究を調査していることはあるだろう。しかし,先行研究を調査していない場合には,文献一覧というものは絶対に存在しない。したがって,文献一覧が存在することそれ自体が,先行研究を踏まえてあるテーマについて論じていることを示しているということができる。さらに言えば,先行研究を踏まえているということはその新書に記載されている情報が正確である可能性が高まるということでもある。可能性が高まるなどと持って回った言い方をするのは,先行研究の読み方がいい加減な著者もいないではないからで,その場合には必ずしも情報の正確性については保障されない。

要素その2:索引の有無

 索引は書籍を書籍たらしめる重要な部分である。索引が存在することで情報獲得の効率は飛躍的に高まる。手っ取り早く特定の情報を手にしたいのであれば,索引が存在するものを選ぶべきである。

 私の恩師は,索引がなければ学術書ではない,と常々口にしていた。新書に学術書に準ずるクオリティを望むべきではないかもしれないが,新書を読む目的が特定のテーマの特定の情報である人にとっては,索引が大きな助けとなるだろう。

要素その3:著者

 書かれたものは,書かれたものによってのみその良し悪しを評価するべきだと考える向きがある。しかし新書を読む場合に限っていえば,このことに必ずしも束縛される必要はない。何か情報を求めて新書を読むのであれば,その情報をもたらしてくれる著者が書いたものを読むべきだ。数量的・統計的なデータが必要なのか,学術的変遷を知りたいのか,社会における問題を抉出して我々が考えるべき課題を見つけたいのか。目的に応じて読むべきものは変わるし,著者が得意とするところは変わってくるはずだ。このあたりの勘のつかみ方は,はっきり言って難しい。しかし,求める情報に応じて読むべきものが見つけれられるようになれば,あとはそれに従って読めば良い。

(あまり大事ではないが)要素その4:出版年

 新書とともに安価な書籍として一括りにされることも少なくないのが文庫であるが,文庫の新刊というのは思っているほど新しくない。どういうことかというと,文庫書き下ろしでない限り,単行本が再度組み直されて文庫となるので,単行本発行から早くても1年程度経過したものが文庫となるのである。日常的に読書をする習慣を持っている人はこのことをよくご存知であろうが,そうでない人にとっては常識ではないようである。だから最新刊だと思って買った文庫が,実は大昔に出版されたものであるということに驚きをもって接することがあるようである。

 それに対して新書は基本的に書き下ろしである。だから出版年が新しければ新しいほど,そこに掲載されている情報は新しい。当たり前の話であるが,このことに留意することが新書選びの出発点である。同じテーマで複数の新書がある場合,新しい情報を得たいのであれば出版年が新しいものを選ぶべきである。

(あまり大事ではないが)要素その5:出版社(〇〇新書)

 新書御三家は『岩波新書』,『講談社現代新書』,『中公新書』らしい。これら3つのレーベルをチェックすることは基本だろう。個人的な印象でいえば,岩波新書は現代的な社会問題や自然科学史に強く,また古典的な名著も多い。講談社現代新書は現代文化やビジネス関連のテーマを扱ったものに良書が多く,全体的な傾向としてはライトな印象がある。中公新書は社会科学・人文科学に長じており,近年では最もアカデミックで学術書とも呼べるような重厚なものまである。

 

 以上,取り急ぎ5つの要素を挙げた。しかし途中で力尽きた。今後も手を加えて,きちんとしたものとしたい。